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第6回 The Doobie Brothers アルバム全紹介(その6)

The Doobie Brothers オリジナルアルバム紹介の6回目。 今回は,結果的にバンド最後のスタジオ録音盤となったアルバムを紹介します。(October, 2004)
 
 1979年

ONE STEP CLOSER ONE STEP CLOSER  (邦題「ワン・ステップ・クローサー」)

 最後のスタジオ録音となった 9th アルバム(ベストアルバムを入れれば 10 作目)。 このアルバム発表後のツアーが終了して一段落したところで Doobie Brothers はついに解散を発表,お別れの挨拶としての "FAREWELL TOUR" を行なって,その活動に終止符を打つことになります。

 半ば無理やり発表したようなものだったとはいえ,前作 "MINUTE BY MINUTE" は大ヒットし,最高の結果を獲得することになるわけですが,バンド内の行き詰まり感は奥のほうでまだくすぶっていたようです。 アルバム発表後まもない 1979 年初頭にラジオ放送用に収録されたライヴ音源などを聴くと素晴らしい演奏内容であり,実際,バンドの状態も持ち直していたと思われますが,後のインタビューによれば,続いて3月に行なわれた Japan Tour(2度目の来日公演)の途中で,コンサートでの演奏内容が不本意なものだったことをきっかけに激しい口論となり,感情的になったメンバーはついに「解散」を口にします。 結果,このツアーの残り日程を消化した時点でバンドは散り散りバラバラになったとのことで,実質的には "The Doobie Brothers" の活動はここで終わっていたのです。
 1970 年代はロックの産業化が本格化した時期にあたり,多くのロックバンドはツアー〜レコーディングを切れ目なく続けるハードな活動を強いられていましたが,そのことからくるストレスが限界に達していたということが,後のメンバーのインタビューなどからも伺われます。
 しかしながら,そうしたバンドの状況に反するように,"MINUTE BY MINUTE" は予想以上の大成功を収め,彼らは頂点に立つことになりました(アルバム "MINUTE BY MINUTE" とシングル "What A Fool Believes" が共にチャートの1位になったのは,解散を決めたこの Japan Tour 終了直後だったそうです)。 皮肉と言えば皮肉な話ですが,この成功を受け,もともとこんなことで解散せずにバンドを存続させたいと考えていたリーダーの Pat Simmons (g, vo) は, “せっかく大成功したのにそれを放り出して今辞めることはないだろう,またやり直そう” とメンバーに呼びかけ,それに呼応して集まったメンバーで再起を図りました。 その結果生まれたがこのアルバム "ONE STEP CLOSER" ということになります。 つまり,本作は,実質的には “再結成作” に近いものなのです。

 結局のところ Jeff Baxter (g, vo) と John Hartman (dr) はバンドに戻ることはなく,特に Hartman の脱退によってオリジナルメンバーはついに Pat Simmons 1人になってしまいました。 手薄になった演奏面をカバーするために,同年夏から行なわれた全米ツアーでは,サポートメンバーとして Cornelius Bumpus (sax, key, vo), John McFee (g, pedal steel, vln, vo), Chet McCracken (dr, perc, vib) を加え,その後,そのままこの3人が正式メンバーになりました。
 新加入の3人はいずれも柔軟なマルチプレイヤーであり, Bumpus と McFee の2人は,再結成後の Doobies の活動でも行動を共にしています。 McFee は, Doobies が多様な音楽性への挑戦をバンドとしての成功に結び付けていることを,かねてからうらやましく思っており,自己のバンド(Clover (ちなみに vo は Huey Lewis でした))でもそれを目指したけれどうまくいかなかったと語っており, Doobies への加入には期するところがあったようです。
(現在 McFee は正式メンバー。 Bumpus は,再結成後の正式メンバーにはならずにサポートメンバーとして Doobies に関わり,また, Steely Dan をはじめ多くのアーティストのサポートも務めるかたわら,意欲的にソロ活動も行なっていましたが, 2004 年1月,移動中の飛行機内で心臓発作により急逝しました。)
 McCracken はもともとジャズ/フュージョン的なバックグラウンドを持つプレーヤーで,もうツイン・ドラムスはやめて1人でやろうと思いかけていた Keith Knudsen (dr, vo) は,オーディションに来た McCracken の演奏を見て考え直したと語っています。
 また, Tiran Porter (b, vo) は,レコーディングには参加したものの,その後まもなく脱退していますが, 2000 年に結成 30 周年を祝って行なわれたファンの集い(Saratoga 2000, Fan Club Convention & Celebration)でのファンとの会話の中で,「('70 年代の) Doobie Brothers は,本当は "MINUTE BY MINUTE" で終わっていたんだ。 でも,その後の "ONE STEP CLOSER" のレコーディングに参加できたことは誇りに思っている」という趣旨のことを語っているそうで(← 日本の非公式ファンサイト "THE DOOBIE BROTHERS HOMEPAGE" に掲載された報告から。 この報告は残念ながら現在読むことが出来ません),その発言からは,この作品が,ある種の連帯意識に支えられた特別な意味を持つものだったことが伺われます。

 レコーディング参加メンバーには,正式メンバー & Bobby LaKind (perc, vo) のほか,前作に続いて Nicolette Larson (vo) や,後に Tower Of Power に加わる Lee Thornburg (tp, flugelhorn) らが名を連ねています。 また,ストリングス・アレンジに Simon & Garfunkel"Bridge Over Troubled Water (明日に架ける橋)" など多くの名アレンジで知られる Jimmy Haskel が迎えられているのも目を引くところです。
 レコーディングは非常に楽しい雰囲気の中で進められたようで,メンバーは皆,再び集まって演奏できることを喜んでおり,スタジオ内はポジティヴな空気に満ちていたと証言されています。

 そして,アルバムそれ自体も素晴らしい内容です。 僕としては, "MINUTE BY MINUTE" よりも素晴らしいアルバムだと断言したい。
 全体を流れるのは従来以上にソウル色を強めた音楽性で,その方向性がアルバムに統一感をもたらしています。 特徴的なのは, Michael McDonald (key, vo) の加入以降追求されてきた整理された落ち着いた音ではなく,かつての持ち味であった重心の低い躍動的なリズム感が戻ってきた点で,それが,前作までに確立された洗練された音楽性に見事にブレンドされています。
 全般に骨太な分厚い音作りになっていて,ライヴを聴いているような臨場感がありますが,それもそのはず,このアルバムのほとんどのトラックはスタジオ・ライヴ的な形式で録音されたとのことで,そのことがアルバム全体を支配する素晴らしい躍動感・高揚感につながっているようです。 この結果,上述したスタジオ内のポジティヴな空気が上手く捉えられ聴く側にも伝わってくることが,このアルバムの大きな魅力でしょう。
 スタジオ・ライヴ的な録音を行なった結果,ほとんどの曲でメンバー全員の参加による演奏が楽しめ,必要な音だけに切り詰める傾向にあった従来の作品よりも多くの音が詰め込まれています。 全体のサウンドとしては,濃密な空気感を漂わせつつも,ごちゃごちゃした印象のない聴きやすいものになっており,空間処理に定評のある Ted Templeman (produce) の見事な手腕を感じます。
 大半の曲でツイン・ドラムスが採用されていることも,個人的にはポイント高いです。 これまでの Hartman & Knudsen のツイン・ドラムスに比べると, Knudsen & McCracken のコンビは,ツイン・ドラムスならではの重心の低さに加えてしなやかな手触りを感じさせ,本作で展開されている Blue-Eyed Soul 的な音楽にマッチしているように思います。 これにパーカッションを加えた打楽器セクションを核とした厚めの音作りによって,過去2作のクールな音とは一線を画したホットでパワフルな音楽性を明確に打ち出しています。
 ライン録り的なクリーンさを感じさせた Jeff Baxter のギターがなくなった上に,ライヴ的な録音を採用したことによるギターサウンドの変化も,そうした印象を強めており,更に付け加えるなら,ギタープレイ的にも,かつての歯切れのいいカッティングから,ミュートを交えた単音バッキングやアルペジオに演奏の中心が移っていて,この点もソウル色を強く感じさせる要因になっていると言えるでしょう。

 アルバムの中心的なイメージをなすのは,やはり,前作で確固たる名声を得た Michael McDonald の声であり曲であるわけですが,メンバー同士も含め共作が増えるなど,確実な変化が見られます。 McDonald の曲だから演奏の中心も彼の key のリフ・・・ということはなくなり,更には,曲を書いた人がリードヴォーカルをとるというわけでもなくなるなど,曲にとって効果的なアレンジ・人選が柔軟に行なわれています。 とにかく, “バンド全体によって曲が表現されている” という印象が強くなっているのです。
 端的に言えば,前作 "MINUTE BY MINUTE" に入っている幾つかの曲は,そのまま Michael McDonald のソロアルバムに収録されても大きな違和感を与えないように思われるのに対して,本作では, McDonald が歌っている曲であっても彼のソロプロジェクトとは全く異なる「バンド形式でしかあり得ない音」になっている・・・という気がします。 また,ヴォーカル面でも他のメンバーの寄与が大きくなり,単純に「McDonald が看板」という一面的な捉え方は出来なくなっています。
 
 ストリングスおよびそれと溶け合うコーラスが美しい先行シングル曲 "Real Love",それに続く "No Stoppin' Us Now" あたりが前半のハイライトでしょう。 特に後者は,ホットな 16 ビートに Pat Simmons のパワフルな歌,親しみやすいメロディとコーラス,複雑さと聴きやすさを兼ね備えた立体的な演奏展開・・・と,彼らが本来持っていた豪快さを,アップデートした音楽性の中で味わわせてくれる快作です。 中盤で,次々と転調を繰り返しながら盛り上がっていくギターソロにも興奮させられます。
 後半に入って,ハッピーなシャッフルの表題曲 "One Step Closer" が登場します。 日本盤のライナーノーツを担当した大伴良則氏が Four Tops を引き合いに出している通り,黒人コーラスグループが取り上げてもおかしくない曲調です。 McDonald と Bumpus がリードヴォーカルを分け合い,サビではコーラスとのコール&レスポンスを展開するというヴォーカルアレンジも,黒人コーラスグループ的な雰囲気を盛り上げます。 この曲は翌年のグラミー賞授賞式でもライヴ演奏されていますが,それはそうと,アルバム全編を通じて Cornelius Bumpus の活躍ぶりには目を見張るものがあります。 2曲でリードヴォーカルを務めるほか,随所でセンスのいい sax ソロを聴かせるなど,逸材ぶりを遺憾なく発揮しています。 再結成後の Doobies が当初サポートメンバーとして彼を起用し,それ以降も Tower Of PowerYellowjackets への参加で知られる Marc Russo などの優れた sax 奏者をツアーメンバーに採用し続けているのも,短期間の在籍だったにも関わらず彼の存在感が大きかったことを示しているように思います。
 そして,個人的に後半のハイライトと思うのが, McDonald 作の "Keep This Train A-Rollin'" です。 彼らしい R&B テイストを残した曲で,ここでも躍動感あふれるリズムセクションとピアノ,厚みのあるコーラスワークが,高揚感と曲の持つ魅力とを強力に伝えます。 個人的な意見ですが,ソロに転向した後の Michael McDonald は,落ち着いたナイスミドル路線 (?) が中心になってしまって,この曲のようなワクワクするような音楽性を置き忘れてしまったかのように思えます。 その点から見ても,こうした曲は McDonald ひとりの功績ではなくバンド内での相互作用によって生まれてきたと見るべきでしょうが,いずれにせよ,失われてしまったのはとても残念です。
 続くインストルメンタル曲 "South Bay Strut" は,ほぼ「フュージョン」と呼んで差し支えないでしょう。 Cornelius Bumpus の sax をフィーチャーした美しい曲で, Grover Washington, Jr. あたりの音楽性に通じるものを感じさせます。 この曲まで来ると,もはや彼らの音楽をロックの枠組みだけで語るのは無理があることを誰もが納得するのではないでしょうか。

 ・・・とまぁ,キャッチコピー的にまとめるなら,新メンバーが持ち込んだ音楽性を加えることで,また新たな視野を獲得した充実作・・・という感じのアルバムで,個人的にはもっと評価されていい作品だと思います。
 本作で展開された音楽は,これ以前及び再結成後の Doobie Brothers とも,ソロ転向後の Michael McDonald のそれとも微妙に異なっており,(しかも上で書いたとおり Cornelius Bumpus が亡くなってしまったため)現在,これらの曲に生で接することは望みにくい状況になっており,残念としか言いようがありません。
 結果的には最後のスタジオ・レコーディング・アルバムになったとは言え,存続の危機を乗り越えたバンドの意欲と希望が伝わる素晴らしい “再出発作” です。

 

その7に続く)