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第3回 The Doobie Brothers アルバム全紹介(その3) The Doobie Brothers オリジナルアルバム紹介の3回目。 今回は,バンドの転換点となったアルバム1枚に絞って紹介します。(August, 2004) |
1976年 |
TAKIN' IT TO THE STREETS (邦題「ドゥービー・ストリート」) 問題作の 6th アルバム。 あらゆる意味で Doobie Brothers の転換点になった作品と言えます。
傑作 "STAMPEDE" を制作した彼らはツアーに出ますが,その途中でバンドの顔である Tom Johnston (g, vo) が胃を壊して家に帰るというアクシデントに見舞われます。 原因はドラッグだと後に本人も認めており,状態を見かねて周囲が家に帰したということのようです。 この後,彼は長い療養生活を余儀なくされます。 Steely Dan のツアーというと(僕の記憶では)1974 年 "PRETZEL LOGIC" 発表後のものがほぼ最後であり,Michael McDonald は,そのツアーと次のアルバム "KATY LIED" に参加したものの,それ以降ライヴらしい活動はほとんどなく(この後の Steely Dan はバンド形態を完全に解消し,Donald Fagen と Walter Becker の2人のレコーディングユニットに移行してしまいます),結果としてそれほど忙しいわけではなかったのだろうと思います。(余談ですが,Donald Fagen がホストを務める "THE NEW YORK ROCK AND SOUL REVUE" (1991 年)において,1974 年頃の Steely Dan のツアーを懐かしみながら Michael McDonald と一緒に "Pretzel Logic" を演奏するという,ファンには涙モノの一幕があります。)
McDonald としては,Doobies への参加はあくまで臨時のツアーサポートメンバーとしてのものであり,ツアーが終わったらサヨナラだろうと思っていました。
エライ長い前振りになりましたが (^^;;,こうして Tom Johnston の復帰を待たずに制作されたこのアルバムは,これまで Doobie Brothers の音楽に親しんできた人達にとって,賛否両論の問題作になりました。 以後の Doobies の音楽的な変遷を考えるとこのアルバムはターニングポイントであり,内容的には過渡期のものと言うことが出来ます。 しかしながら,そうした位置づけを簡単にしてしまえるがゆえに(しかも,後に,大きな成功を収めるアルバムが誕生したがゆえに)このアルバムに対して,正面から向き合った真っ当な評価がなされることはあまりないように思えます。 レコーディングメンバーとしては,従来通り Memphis Horns が加わっている他,初めて Bobby LaKind (perc) がレコーディングに参加,また,Maria Muldaur (vo) が一声だけ (^^; 出てきたりします。 Tom Johnston は最小限の参加にとどまっています。 それから,録音の向上もこのアルバムの特徴と言えるでしょう。 前作 "STAMPEDE" も従来よりクオリティの高い録音でしたが,このアルバムではその方向が更に推し進められ,粒立ちの良いシャープな音像が得られており,彼らの新たな音楽性をアピールするのに一役買っています。 いよいよ Ted Templeman の“クリーン・サウンド”が確立されたという感じです。 全体的に見て,とにかく新しいアイディアを惜しげもなく投入している感があります。 また,Michael McDonald 独特のくぐもったようなソフトで厚みのある声が加わったことで,コーラスの響きは若干ソリッドな感覚が抑えられ,厚みを強調する方向にシフトしていますが,それでも他とは一線を画した独自の響きは維持されています。 あまり深く考えたことがなかったんですが,結局のところ Pat Simmons の声が鍵を握っているのかもしれません。
まず,アルバム冒頭の "Wheels of Fortune" ,出だしはこれまでのアルバムと特に違和感はありません。 しかし,sax が加わるあたりから徐々に様子が変わり,NY 色が感じられるホーンや Steely Dan の影響が感じられるギターソロをフィーチャーした間奏に入ると明らかにこれまでとは違った印象に変わります。 シャープなツインドラムスの響きや中間部のベースも印象的で,従来の Doobies の音楽性と新たな洗練された方向性との,見事なミクスチャーになっています。 次々と歌い手が入れ替わりコーラスでとどめを刺すヴォーカルアレンジも加わって “総力結集” の感もあります。 ちなみに,この曲のレコーディング時,Keith Knudsen (dr, vo) は結婚休暇をとっており,ドラムスには代役として Little Feat の Richie Hayward が参加しています。
実はこのアルバム,シングル "Takin' It to the Streets" のヒットにより,当時の売り上げは前作 "STAMPEDE" を上回っています("STAMPEDE" は,後の評価の高さとは裏腹に,発表時はシングルヒットに恵まれず売り上げが伸びなかった)。 その割にはあまり省みられることのないのはもったいないことです。 「多様性」は Doobie Brothers の音楽を語るときのキーワードであり,多様な音楽性を1つのバンドの元に結実させることは結成時からの基本コンセプトでもあったわけで,このアルバムは,そうしたバンドの方向性を改めて世間に知らせたものと言えるかも知れません。
(その4に続く) |