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第2回 The Doobie Brothers アルバム全紹介(その2)

The Doobie Brothers オリジナルアルバム紹介の2回目。 前回に引き続き2枚のアルバムを紹介します。(July, 2004)
 
 1974年

WHAT ARE ONCE VICES ARE NOW HABITS WHAT ARE ONCE VICES ARE NOW HABITS  (邦題「ドゥービー天国」)

 ついに No.1 ヒットシングルを送り出した 4th アルバム。 邦題はちょっと「マイッタな・・・(^^ヾ」と思わなくもないですが,当時のロックの邦題って,今にして思うと笑えるのが多かったんですよね。

 アルバム製作中に Michael Hossack (dr) が突如脱退というアクシデントに見舞われたようで,途中から dr は Keith Knudsen (dr, vo) に交代しています。 このころは,今ほど本国の情報が日本側に伝わっていなかったみたいで,名前のカタカナ表記が「キース・クヌッドセン」などと書いてあったりします(今は,本来の発音に近づけて「キース・ヌードセン」などと書かれることが多い)。 それはともかく,Keith Knudsen は,Doobies の歴史上,最も評価の高いドラマーでしょう。 確かなテクニックとノリの良さに加え,どこかしなやかさを感じさせる彼のドラミングは,以後解散まで Doobies の重要な柱になります。
(現在の Doobie Brothers のドラムは Michael Hossack と Keith Knudsen の2人が担当しています。 入れ違いでバンドに関わり,同時に在籍することのなかった2人が現メンバーというも不思議なものです。 [追記 (2006/05/16)] Keith Knudsen は 2005年に逝去,現在は Ed Toth (dr) が加入しています。)

 他のレコーディングメンバーでは,Bill Payne (key), Jeff Baxter (pedal steel) という従来の顔ぶれに加え,Eddie Guzman (perc) などがクレジットされています。
 更に,前作のシンセに替わってメンフィス・ホーンが加わり,サウンドのスケールアップに一役買っています。
 (そうそう,余談ですが,水上はるこ氏による本作日本盤のライナーノーツは,ハッキリ言ってヒドイ。 情報量ゼロの上にどうしようもない内容で,もうカンベンしてくれって感じです。(手厳しい言い方かもしれないけど,このライナーノーツはちょっと許せない。))

 また,アルバムにはまだ参加していませんが,このアルバムが発表された後あたりから,ライヴには Bobby LaKind (perc, vo) がサポートメンバーとして参加し始めたようです。 彼はもともとコンサートの照明を担当していたのですが,コンサート前の調整の際にコンガを叩いたりしていたのを Pat Simmons (g, vo) が見つけて抜擢したのだそうです。 そんな気楽なことでいいのか?という気もしますが (^^;,後のライヴ音源などを聴くと,彼のコンガのリズムは,揺るぎない筋の通った強さを聴き手に感じさせるもので,「Pat Simmons の目に狂いはなかった」といったところでしょうか。 1974 年のテレビ番組の映像を見ると,既に Jeff Baxter が演奏に参加しており(まだ立って弾いている),ドラムの1人がパーカッションに回ると彼がドラムセットに座るなんていう場面があったりします。 この点から見ても,バンドとして専門のパーカッショニストが欲しかったのでしょう。
 Bobby LaKind は,正式メンバーとして記されることこそずっと後になりますが,1992 年に病気で亡くなるまでずっと Doobies と行動を共にすることになります。

 さて,アルバムに話を戻すと,内容は基本的に前作の延長上にあるものですが,曲調は,“R&B〜ブギの色合いの強いもの” と “哀愁を帯びた比較的静かなもの”とに,かなりハッキリ2分されています。 これらが交互に登場するような構成になっていますが,アルバム全体としてトータルな作品になっていた前作に比べて,出来た曲を単純に寄せ集めたようなやや散漫な印象が拭えず,結果的にアルバムとしての起伏に欠けるきらいがあります。 ダイナミックな起伏を持った曲がそれほどなく,それぞれが比較的こぢんまりとまとまっていることも,そういう印象を強くする要因になっているように思います。 アップテンポの曲は R&B への回帰色が強く感じられますが,僕自身,このアルバムを初めて聴いたときは正直なところピンと来ず,「いまいちつまらないアルバム」と評価していました。 それぞれの曲のかっこよさに気が付いたのはかなり後になってからでした。

 アルバム全体の印象は上記のようにそれほど良くなかったりしますが,1曲1曲を取り上げると,それぞれはかなり聴き応えあります。 彼ららしい軽快なカッティングにホーンとコーラスが乗る "Eyes of Silver" や,息もつかせぬ素晴らしい展開でソロ回しまでも一気に聴かせる豪快な R&R の傑作 "Road Angel" をはじめ,ちょっとねじれた感覚でギターとホーンのアレンジが見事な "You Just Can't Stop It",優しさをたたえた Pat Simmons (g, vo) の "Tell Me What You Want (And I'll Give What You Need)",それと対をなすような Tom Johnston (g, vo) の佳曲 "Another Park, Another Sunday",不思議なエキゾチシズムみたいのもの(?)を感じさせ個人的に大好きな "Daughter of the Sea",そして,そこから最後の哀愁を帯びた "Flying Cloud" に至る流れなども素晴らしいものがあります。 ちなみに,"Road Angel" は,現在でもコンサートで頻繁に演奏される重要なレパートリーになっています。

 しかし,このアルバムでなんと言っても重要なのは,Pat Simmons 作の "Black Water" が Doobies にとって初の No.1 ヒットになったことでしょう。 もともとは "Another Park, Another Sunday" がシングルカットされて,"Black Water" はそのB面だったのですが,ローカルラジオ局がこの曲をプッシュしたところ火がつき,全米のラジオ局がそれに倣う形でヘヴィーローテーションとなって大ヒットに繋がったのだそうです。 南部的な郷愁に満ち,気品さえ感じさせる美しい曲で,コーラスアレンジの見事さや巧みなレコーディング処理など,随所に鋭い仕掛けが用意されており,「お気楽バカ」みたいな形容をされることの多い(失礼) Doobies のイメージを裏切る(?)知性や洗練が感じられます。 とはいえ地味〜な曲であることは間違いなく,これが大ヒットになるのだから世の中分からないものです。 ちなみに,当初,中間部にディキシーランド風の演奏を入れたかったのに,それが企画倒れに終わり,次善の策として考えたのが発表された形なのだそうです。

 ということで,結論としては,1曲1曲はクオリティ高いのに,アルバム全体としては,なんかもう1つ決め手に欠ける作品ということになり,ちょっともったいない話です。 意外に良い曲が詰まったアルバムなので,僕と同様に最初の印象が悪かった人も,もう1度聴き直してみることをオススメします。

 そして,これが次の大傑作への布石になるのです。

 

 1975年

STAMPEDE STAMPEDE  (邦題「スタンピード」)

 "Black Water" の大ヒットによって注目度が増したのか,予約だけでミリオンセラーを達成したという 5th アルバム。 決定盤とでも言うべき大傑作で,個人的には,Doobie Brothers のスタジオ録音盤の中でどれか1枚選べと言われたら,これを選ぶだろうと思います。

 過去作でゲスト参加し続けていた Jeff Baxter (g, pedal steel, vo) が Steely Dan を脱退して正式メンバーとして加入,ツインドラムス&トリプルギターという強力な布陣になりました。 レコーディングメンバーとしては,準レギュラーの Bill Payne (key) はもちろん,Victor Feldman (marimba, perc) などが参加している他,1曲で Ry Cooder (g) が見事なスライドソロを聴かせます。 また,ホーンセクションとストリングスを随所に配し,ホーン&ストリングスアレンジには Curtis Mayfield の名前があったりします。
 なお,次の作品から key が正式メンバーとして加わるので(もちろん Michael McDonald のことですね),長らく続いてきた Bill Payne の準レギュラー的レコーディング参加もこのアルバムまでということになります。

 内容的にも文句なしの完成度を持ち,この後 Tom Johnston (g, vo) がフロントからいなくなるというバンドの歴史的な経緯を考えるなら,いわゆる「前期」 Doobies の音楽の到達点を示す作品と言えるでしょう。
 また,音質面でも向上が見られ,Ted Templeman プロデュース作品に共通すると言われる“クリーン・サウンド”の特徴がはっきり見え始めています。 例えば1曲目の "Sweet Maxine" では,Bill Payne の素晴らしいピアノの導入部に続いて,各楽器が広い空間に明確な定位を持って登場し,特に,左右にどっかりと定位したツインドラムスが蒸気機関車を思わせる強力な推進力で曲をドライヴさせる様は,快感です。 僕がツインドラムス大好きになった原因の1つがこの曲です(もう1つは "FAREWELL TOUR" の "Takin' It to the Street")。 更に,重厚な演奏に分厚いコーラスワーク,ディレイとツインリードギターを巧みに使った中間部での場面転換,そしてそれらの間を縫うスリリングなピアノなど,最高にスケールのでかい豪快な R&R になっています。

 2曲目の "Neal's Fandango" は現在でもライヴでよく演奏される Pat Simmons の代表作の1つ。 快速8ビートで,pedal steel が活躍するなどカントリーフレーバーが漂いますが,ここでも強力な推進力のツインドラムスがロック側へ手綱をグイッと引っ張り,爽快さと厚みとを共存させることに成功しています。 間奏での変化もいいアクセントになっており,単純なノリだけではない見事な構成力を見せます。
 "Music Man" では,Curtis Mayfield のアレンジによる効果的なストリングスと野性味ある Tom Johnston の歌声が広大な大地を連想させ,かと思えば,一転して "Slat Key Soqual Rag" ではアコースティックギター2本で美しいラグタイムを聴かせます。(ちなみに,"Slat Key" というのは,どう見ても "Slak Key" のことと考えられます。 制作段階のどこかでスペルミスしたのだろうと言われています。 作者の Pat Simmons も,もはや手遅れと完全に開き直っているということなのかどうかは分かりませんが,コンサートでの曲紹介でははっきりと "Slat Key" と言ってます(^^;。 表記ミスと言えば,"Take Me in Your Arms (Rock me a little while)" の (  ) 内の部分も,アナログディスク時代は単純に "(Rock me)" と書かれており,"(Rock me a little while)" と書かれるようになったのは CD 時代に入ってからです。)
 後半(B面)に入っても,ヒットしたカヴァー曲 "Take Me in Your Arms (Rock me a little while)" は勿論のこと,Ry Cooder 参加の "Rainy Day Crossroad Blues",3rd アルバムの "Clear as the Driven Snow" で見せたドラマティックな展開を更に発展させた "I Cheat the Hangman" (この曲のストリングスアレンジは Nick DeCaro)など,充実した曲が目白押しです。
 Doobies の曲のアレンジでは効果的な場面転換が多く見られ,曲の良さ・立体感を際立たせていますが,アルバム最後の "Double Dealin' Four Flusher" の中盤,曲調をガラリと変えて登場する E. Piano ソロなどは,後期のサウンドに繋がる面があり,現在の耳で聴くと,Doobies のサウンドが前/後期で断裂しているのではない,ひと繋がりのものであることが分かります。

 本当に全ての曲が素晴らしいアルバムです。 1曲1曲のスケールが増すと同時に,アルバムトータルとしても,広大なアメリカの荒野を感じさせる統一したカラーがもたらされるなど,前作で感じられた不満が見事に解決されて,あらゆる意味で完成度が高い作品に仕上がっています。
 Doobie Brothers に興味があって,このアルバムを未聴の方は,ぜひ聴いてみてください。

 

その3に続く)