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第 14 回 Chris Smith: "REAL THING" 案の定,前回から半年以上が経過(^^;,やる気が続かなかったことが丸分かりですが,久々に更新です。 今回は,わりと新らしめ,だけど,かなりマニアックな1枚です。 (December, 2006) |
2004年 |
"real thing" / Chris Smith シンガー・ソングライター Chris Smith の 2nd にあたる 2004 年のアルバム。 ネットサーフィン中に偶然,さくさく三角さんのブログのこの記事で知りました。 ここ1年くらいの間に買った CD の中では一番よく聴いたアルバムかも。 「違いが分かる男のアルバム」(?) なのです。
さて,このアルバム "real thing" ですが,極めて正攻法なシンガー・ソングライターの作品という感じです。 その昔,"MOR (middle of the road)" という言葉がよく使われたことがありましたが,その言葉を思い出させる内容と言ったら,伝わる人には伝わるでしょうか。 サウンド的には,1970年代後半〜80年代前半に一声を風靡した AOR (adult-oriented rock) の延長上にあるもので,Ned Doheny あたりをやや渋くした感じとでも言うのでしょうか,メロディ・サウンドともにオーソドックス,奇をてらったところなど微塵もありません。
かつての AOR もそうでしたが,ジャズ,ブルース,ロック,フォークといった要素が微妙にブレンドされた音楽は,誰の耳にも心地よいものだと思います。 Chris Smith 本人の歌声は,ブルー・アイド・ソウルというとやや語弊があるかも知れませんが,年齢に応じた(?)滋味を感じさせるもので,適度に甘く適度にほろ苦く,味わいもあるけれど聴きやすさも失ないません。 随所に挿入されるアコースティックギターとスキャットのユニゾンもなかなかです。 ちょっと残念に思える点があるとすれば,全体のミキシングでしょうか。 全ての音を同じようなレベルで扱おうとしているのか,どの楽器も同じような音量で同じような距離に定位してしまい,結果的にやや平板な音像になってしまっています。 もう少し丁寧なミックスで,奥行きのある音場を作ってくれていたら,また印象が変わっただろうと思ったりします。 まあ,瑣末的なことなので,作品全体の価値を大きく左右するようなことではありませんが。
上でも書いたとおり,曲は非常にオーソドックスなもので,意外な展開などはありません。 疾走感のある表題曲から,5拍子を全く自然に聴かせる最後の "I'll Remember You" まで,突出した作品もない代わり,捨て曲と言えるような曲もなく,安心して聴けます。 まあ,その反面,ある意味どこかで聴いたことのあるような曲が並んでいるとも言えるので,そこをどう評価するのかが,このアルバムへの評価を左右するのかも知れません。 と,持ち上げてきましたが,なんといってもこの作品の最大の問題点は「入手のしにくさ」です。 日本国内ではほとんど流通していないようで,大手だと amazon.co.jp でも towerrecords.co.jp でも,全く無視されています(もちろん国内盤なんて出てません)。 まあ,バカ売れするような音楽とはとても思えないから,仕方がないところではあります。 僕はここで入手しましたが,外国の業者を利用するのはちょっと……と思う人も少なくないでしょうね。
繰り返しになりますが,人によっては,「あの頃の『その手のアルバム』とどこが違うんだ?」と言うかもしれません。 でも,あの頃の音楽を今やっちゃいけないってこともないでしょう。 いい音楽ならそれでいい……ってことで,個人的にはオススメです。 一度試してみる価値はあると思いますよ。 |